箱入り娘旅行記

人生は旅の連続

「生」と「死」を感じる -パレルモ・イタリア- ①

ハロー、ユカ・チェルシー・タムラです。

イタリアのシチリア島パレルモにある、カプチン・フランシスコ修道会のカタコンベには、約8000体ものミイラと、世界一美しいと言われるミイラが置かれています。

私にとって意味のある人生のテーマの1つ「死」。
日常生活では、ほとんど実感することもなく、突如現れる悲しくも恐ろしい存在。

しかしヨーロッパの文化においては、日本とは違う存在の仕方で扱われ方をしている「死」を体感したいと思い、フランスのパリのカタコンベに続いて、ここを訪れました。

パレルモまで

私はファルコーネ・ボルセリーノ空港に降り立って、チージニというエリアのB&Bに宿泊。

ここからカタコンベがあるパレルモの街までは、バスで約1時間。
バスのチケットは、B&B近くのコンビニのような店で購入。
ノンストップでパレルモ中央駅に到着。

私はとんでもない方向音痴なので、交番でカタコンベまでの行き方を聞いてみました。
しかし、警察官の方も行き方を知らず…彼の友達やら通行人やら総動員で地図を見て調べてくれた結果、

「バスの運転手に聞いて」

ということで…駅のバスプールに向かい、チケット売り場で乗るべきバスを教えてもらう。

違うバス停で降りてしまい、来たバスにとりあえず乗り、運転手さんにカタコンベ最寄停留所を聞いても、イタリア語が通じず…
しかし、状況を察してくれた乗客のおじちゃんが最寄駅を教えてくれて、そこからカタコンベまでの行き方も親切に教えてくれました。

イタリア語と日本語の会話が成り立ち、無事にカタコンベに到着。


カタコンベ到着

カタコンベの見学料は、3ユーロ。教会の横にある小さな入口から地下に下りて行きます。

カタコンベ内での撮影は一切禁止。
ガイドなし、中にも係員はいませんでしたが、監視カメラが設置されているようで、撮影をしようとしている人に対し、スピーカーから係員が撮影禁止の注意を呼びかけるアナウンスがありました。

遺体をミイラとして安置するのが、カプチン・フランシスコ修道会の死体埋葬方法ということです。
ミイラのほとんどが生前と同じように着衣の状態で安置されています。
可愛らしい服を着た赤ちゃんのミイラ、立派な祭服を着たミイラなど、その方々の人生がどのようなものだったか想像すると同時に、どんな気持ちで死を迎えたのか、死と対面したのか、それとも死には気付かずに最期を迎えたのか…考えられずにはいられませんでした。

世界一美しいミイラ

カタコンベの奥のスペースに「世界一美しい」と言われる少女のミイラ、ロザリア・ロンバルドの遺体が安置されています。

昔にテレビで彼女のことを見て、とても衝撃を受けました。2歳になる直前に肺炎で亡くなった娘を悲しんだ彼女の父親が、愛娘の姿を生前のまま留めておくために、はく製の制作をしていた人物に遺体の防腐処理を依頼しました。

ミイラと言えば、ほぼ骸骨に近い状態で、生前の面影は残っていません。
しかし、ミイラになった彼女は今もただ眠っているかのような外見を持ち続けているのです。

彼女の遺体は、温度と湿度が管理された棺に入っていて、その周りはチェーンで囲まれています。
間近で見る彼女は、まさにただ眠っているかのように見えました。

遺体の防腐処理が完成してから数年後、彼女の父親は遺体のある場所を訪れなくなったというのです。
幼くしてこの世を去った娘を、悲しみのあまり生前の姿をまま留めておいたことが、悲しみを癒すのではなく、彼女の「死」を実感させてしまったのでしょうか。

自分が死ぬ時はどんなことを考え、どんな気持ちで最期を迎えるのか、もしくはそんなことすらも考える時間もなく一瞬で死ぬのか、苦しんで死ぬのか…
初めは非現実的な場所のように見えた、約8000体のミイラが安置されるこのカタコンベで、いつの日か自分にも絶対に訪れる「死」の存在に向き合い、受け入れなくていけないという現実を、身近に感じました。

人生の長さではなく、この世界に生まれことに意味があるということを考えさせてくれた、ここで安置される人たち全員の姿を心に焼き付けようと、じっくりとカタコンベ内を見学した時間は、貴重なものです。